Project story

Team KUROSHIO

“海底探査機”
輸送プロジェクト

2019年、産官学が一体となった共同研究開発プロジェクトチーム「Team KUROSHIO」がギリシャで開催された海底探査のコンテストに参加し、見事準優勝を獲得。当社はそれに先立って、「Team KUROSHIO」の海底探査機をギリシャまで海上輸送し、さらにコンテスト後に日本へ帰すまでの梱包プロジェクトを担った。世界でたった一つの、精密機器が満載された海底探査機。極めて高い技術力を要するその梱包は困難を極めた。当社はいかにプロジェクトを成功に導いたのか。奔走するプロジェクトメンバーの姿を追った。

Project Members

深代 徳一
梱包設計

深代 徳一

入社37年目

物流技術部 包装技術グループ グループ長。プロジェクトリーダーとして全体をまとめる。

田中 みさき
営業

田中 みさき

入社7年目

営業本部 国際貿易グループ。営業担当として、「Team KUROSHIO」やフォワーディング会社との交渉などを担当。

山本 紘平
梱包実務

山本 紘平

入社14年目

東京営業所 リーダー。日々の他の案件との調整を行いながら、本プロジェクトの実際の梱包作業を担当。

SECTION01

当社の技術力が試される、
一大プロジェクトがスタート。

ギリシャへ、海底探査機を海上輸送するに当たって、その梱包をお願いしたい。日頃から取引のあるフォワーディング会社からその話がもたらされたとき、深代はかつてない困難な仕事になると予感した。長年、精密機器の重量物から小さなものまで、あらゆる特殊な梱包の設計に携わってきた深代といえども、“未知”の部分が大きかったからだ。

輸送の目的は、産官学が一体となった共同研究開発プロジェクトチーム「Team KUROSHIO」が、ギリシャで開催される海底探査技術を競うコンテストへ参加すること。輸送する機器は、洋上中継機ASVと、2台の自立航行型海中ロボットAUVである。いずれも、コンピュータやセンサーなどの精密機器が満載されており、しかも、「Team KUROSHIO」のメンバーが自ら組み上げた世界でたった一つしかない機器だ。当然、それらを安全に輸送するためには、衝撃などによるダメージを少しでも受けないよう、細心の注意を払って梱包する必要がある。当社の技術力が期待される、まさに“国家プロジェクト” の一端を担う梱包プロジェクトといえる。「これまで培ってきた技術・ノウハウをベースに、さらなる応用が求められると感じるとともに、これは挑みがいのある面白い仕事になるぞと腕が鳴りました」と深代は当時を振り返る。

一方、本プロジェクトの営業を任された田中は、当時、梱包の現場から営業部門に異動してきてまだ1年目。「通常扱うものとは異なり、サイズも価格も桁違いに大きい。正直、そんな難しい案件をメインで担当していいのかなと思いました」田中は不安半分、楽しみ半分の気持ちで、先輩や上司に助けられながら、手探りで営業に取り組み始めた。

SECTION02

未知へのチャレンジの連続
そんな中、真価を発揮し、
柔軟な対応を実現。

最初の壁となったのは、機器の形の詳細が不明だったこと。製作途中だったため、果たしてどういう形で出荷されるかがわからなかったのだ。そこで深代と田中は製作現場に足を運ぶことに。しかし、機器の中身には国家機密の技術も入っており、写真撮影は不可。二人はその場で機器の内容をメモし頭に叩き込んだ。その後、深代は入手した情報をもとに梱包スキームを構築し、同じグループの設計責任者がCADでイメージ図を作成。一方、田中は、深代が準備した概算図での見積もり作成を担った。

しかし……。「Team KUROSHIO」との打ち合わせを重ねていくうちに話は変わっていく。中でも大きかったのは、木箱での梱包ができないとわかったことだと深代は語る。「大きな貨物で精密なロボットということもあり、梱包内部での保護、固定は重要。当然、サイズや重さから、丈夫で、加工、施工が容易な木箱を想定していました。ところがデリケートなロボットのため、衝撃によるダメージはもちろん、高温によるトラブルなどにも備えて温度管理が可能なリーファーコンテナを使用することに。コンテナの規格サイズが更に小さくなり、より厳しい条件になる。

実際、他の荷物ではこの写真のように腰下がたわんだ状態で到着するものもあったという。

当初、想定していたフラットラックコンテナは壁や天井が無いタイプのコンテナで、箱型のコンテナに入らない大型の貨物でも積載できるのが特徴。当然、今回はフラットラックコンテナでの積載を想定していたため、リーファーコンテナになると木箱で梱包したら収まらないと…。完全に弱りました」。積載するには、一回りも二回りも容積を小さくしなければならない。そこで検討した末、少しでも容積を小さくするために段ボールを外装箱として使用することに。しかし、段ボールで強度を確保するのは容易なことではなかった。

「機器本体が載る腰下(こしした)という土台になる部分が一番重要であり、その部分の強度をしっかり計算しました。さらにギリシャでは丁寧に荷物を扱ってもらえないケースまで想定するなど、あらゆるリスクを抽出し、それらへの対処方法を考えました。たとえば、長尺で偏荷重のため腰下がたわんでしまう危険を想定して、木材と鋼材を組み合わせた腰下を設計。梱包の一箇所が損傷したとしても、機器を保護できるよう第二、第三の製品を保護する対策を行ったりなど。「Team KUROSHIO」の方はそこまでやらなくてもいいのではと思っていたようです(笑)。しかし、後日、ギリシャでの荷扱いの状況を目の当たりにして、改めて当社の提案の確かさを実感してくれたときは嬉しい限りでした」

その頃、田中が苦労していたのは、輸出する際の膨大な注意事項を洗い出すことだ。「バッテリーの容量を全部出してもらって、輸出可能かどうか? 当社の倉庫で扱えるのか?など、上司と二人で様々な資料を当たっては一つずつ確認して、というのを繰り返しました」。さらに見積もり作成にも苦労は尽きない。「たとえばリーファーコンテナを使えば価格が大きく上がります。そこで他の出費を抑えて、全体でバランスを取るなど工夫を重ねました」

深代と田中の1年に渡る奔走の日々を経て、 2019年9月、いよいよ当社の梱包の現場に貨物が入ってくる日がやって来た。

SECTION03

それぞれのプロが知恵を出し合い、
オールSTSでやり遂げた梱包作業。

実際の梱包作業を担うメンバーの一人、山本は、現場に次々と貨物が入ってきたとき、「とんでもなく特殊なものが来た」と直感した。梱包のキャリア10年以上に及ぶ山本にとっても未知の領域だったのだ。「外装箱も特注の段ボールで、どうやって組み立てるんだろうと。さらには貨物の中には非常にセンシティブな精密機器もあり、作業で触ってはいけないものもありました」。そこで、貨物の特性を最もよく知る深代と田中も現場に足を運び、アドバイスを行いつつ、営業、梱包技術、梱包作業、それぞれの担当が三位一体となり、まさに“オールSTS”で梱包作業を進めることとなった。そんな中で発揮されたのは、現場の力だ。「設計図はあるものの、なぜその作業が必要なのか、深代さんや田中さんに聞いた上で、現場としてはこうした方がいいよ、と提案したりと、図面をより良くする努力をしました」

最後の山場は、リーファーコンテナに貨物を積み込む作業だ。スケジュールが後ろにずれており、その日1日で積み込みを完了しなければならないギリギリのタイミングだったのだ。「リーファーコンテナは通常のコンテナより内部が狭く、貨物との隙間がほぼゼロの積み付けプランになっています。そのため何か一つがずれると収まらなくなる。出し戻しもあり、思いのほか時間がかかりました」
また、本プロジェクトでは、ギリシャに貨物が届き、「Team KUROSHIO」がコンテストに参加後、現地で再度コンテナに積み、日本に戻すところまで任されていたことも難点だった。「通常はワンウエイで出荷したら終わりです。今回はどうすれば現地でよりコンテナに戻しやすいかと、再現性を考えながら作業を行ったので、どうしても時間がかかりました」。午後3時から作業を開始し、完了したのは午後8時。結果的には予定通り、日本からギリシャへ貨物を送り出すことができました。

SECTION04

新たな技術・ノウハウを得て、
当社はさらに進化・成長し続ける。

約5週間の長旅を経て、貨物がギリシャに無事到着したのは2019年12月。その一報を受け、深代と田中はほっと胸を撫で下ろした。というのも、他国のいくつかのチームはたどり着けなかったほどの、困難な物流プロジェクトだったからだ。当社は、「Team KUROSHIO」が勝負のスタートラインに立つための、物流の勝負に勝ったのだ。そして1週間後、「Team KUROSHIO」は準優勝を果たした。

深代と田中はギリシャから日本へ貨物を戻す作業をサポートするために現地ギリシャに飛んだ。この時、深代が工夫したのは、言葉が通じない現地の作業スタッフの方々のために、作業手順が目で見てわかる3Dの動画を作成したことだ。「動画で確認しながらアイコンタクトを取ることで、作業をスムーズに進めることができました」

そして、ギリシャ最後の日。深代と田中は「Team KUROSHIO」の方々に言われた言葉を深く胸に刻んでいる。「御二方もチームの一員なのだから、一緒に記念写真に入ってほしい」。それは、それまで密なコミュニケーションを積み重ね、深い信頼関係を築いた証だった。

本プロジェクトを通して当社が得たものは大きい。深代は「非常に特殊な貨物の梱包・輸送を完遂する。また一つ、他には真似のできない成功事例をつくることができました」と語る。梱包の現場を担った山本も、「新たな梱包のノウハウも得ることができましたし、何よりも、どんなに特殊な貨物であっても、“オールSTS”でそれぞれのプロが密に連携することで梱包・輸送を完遂できるのだと証明できました」

一口に梱包と言っても、その中には多種多様な技術・ノウハウが含まれている。その仕事には常にチャレンジがあり、一人ひとりの工夫や考えを盛り込むことができる。だからこそ、当社はこれからも様々なプロジェクトに挑み、そのたびに進化、成長を遂げていく。

プロジェクトメンバーからのメッセージ

当社は輸送、梱包・包装設計、パソコンのキッティング、倉庫の仕事までいろんなことをやっている会社。その中できっと何か面白いと思う仕事が見つかるはずです。また、高度な技術が必要とされる特殊な物流サービスばかりで、その中に夢中になれる要素がいっぱいあるのも魅力です。物流の仕事というと女性は少し近づき難く感じるかもしれませんが、男性社員だから、女性社員だからと言った垣根はほとんどなく、団結力があって皆仲が良いです。入社して内部を知ると職場環境もいいし、とても働きやすい会社。私たち一同、そこは強くアピールしたい点です。



(内容は取材当時のものです。)

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